パナレーサーの新しいタイヤ、アジリスト [35-349] をレビューする

Panaracer(パナレーサー)から新しいタイヤが発表された。サイズは16インチ、それもETRTO35−349という規格で、つまるところほぼブロンプトン専用のタイヤ。その名も「AGILEST(アジリスト) [35-349]」だ。アンバサダーという立場で発売前の商品を受け取り4ヶ月ほどテストさせてもらったので、その概要と乗り味を紹介したいと思う。

 

実は1番多く跨っているブロンプトン

旧尼崎発電所跡地、お気に入りだったこの壁も取り壊し工事がスタートしている

ブロンプトンは手に入れてかれこれ5〜6年が経過していて、実をいえば所有している自転車の中で1番跨っている回数が多い。通勤だけでなく、自動車のオークション会場から車両を引き取ったり業務使用が主となっている。以前はお迎え要員と一緒に引取り納車していたので、自分ひとりで出かけ、気軽に車へ積んで帰れるのは画期的だった。

この日はオークション会場へ出品のため、神戸まで車移動して輪行で帰社した

そんな使い方なので1回20km超のライドもあったり知らない道を走ることも多く、メンテナンス頻度も高い。空気圧調整やチェーン洗浄などは頻繁に行なっている。タイヤはこれまで純正のシュワルベ/マラソンレーサーと、パナレーサー/クロスタウンを履いていて、それぞれ「標準タイヤ」と「耐パンク性能重視タイヤ」というキャラクター。なお標準タイヤを使用していたときに2度ほどパンクした記憶がある。

 

アジリストという名前を冠した点

新商品のパッケージとタイヤ本体。パッケージングに力を入れるのも近年のパナレーサーの特徴

今回登場した「パナレーサー アジリスト [35-349]」は、同社がフラッグシップとしているロードタイヤの名前を冠している。社が主軸としているブランド名を違う車種の商品に当てはめるのは勇気がいる(というか古い会社だと風当たりが強そう)と思うが、それだけ本気で開発・商品化に努めた結果だろう。先ほどのキャラクターに当てはめれば「軽量スポーティータイヤ」だ。

写真は4ヶ月使用したサンプル。シクロクロスよろしくまぁまぁハードに乗った割にはキレイ

重量は225g(平均値)で、標準タイヤと比べても50g以上軽量化している。使い古された言葉だが、ひと漕ぎ目はギアが1個軽くなったのかと思うほど乗り味が違った。純正のタイヤと比べれば約20%減なので納得できるし、特にストップ&ゴーが多い小径車では、ホイール周りの軽量化が走行性能に大きく影響する。心地いいスピードに乗ってからも漕ぎの軽さは感じ取れるだろう。

パターンはアジリストでもTU版と似たものとなっている

耐パンク性能については運の要素がありレビューすることは難しいが(4ヶ月間使用して一度もパンクしなかったが、それだけで耐パンク性能が高いとは言い切れない)、700c版のアジリストやグラベルキングの認知度・人気度から言ってもノウハウは確かといえる。耐貫通パンク強度を高めるためにナイロン素材が採用されている。

 

空気圧について

神戸の美術館前。FREITAGのバッグをつけてこんな感じで走っていることが多い

私は体重が65kgで自転車は12kgほど、空気圧は3.5barに調整した。通常ブロンプトンは4.5bar-7.5bar(65 -110 psi)程度が標準とされているが、自分には乗り心地が悪く感じたのでもう少し低く設定している。700cに比べてエアボリュームは少ないため、ロードバイクの“幅広タイヤの低圧運用”ほどの劇的な違いは感じなかったが、それでも段差越えや巡航時の快適さに影響があった。

参考までに、「35–349」とは太さ(幅)が35mm、ビード径(リム内径)が349mmという規格。いわゆる普通の16インチ小径車はビード径が305mmが一般的、つまりブロンプトンとは違う16インチなので注意が必要だ。なんともややこしい。

 

手に取りやすい=趣味性の広がり

オークション会場からの帰り道。会場から駅まで離れているので、気が向いたところまで走って輪行

私がアンバサダーを務めているパナレーサーしかり、オーダーウェアのウエイブワンしかり、どちらも日本国内ブランドで生産拠点も国内が中心だ。輸入製品中心の自転車文化だからこそ、日本のブランドを大切にしたいという想いもあるのだが、何より商品供給がリアルタイムかつ安定しているメリットは大きい。それこそ商品を買おうと思い立った頃には在庫がないという体験した方も少なくないと思う。特にタイヤは消耗品なので検討→購入のペースが早い。

輪行バッグにイン。慣れているので1分で完了。そういえば阪神岩屋駅には初めて訪れた

他方ブロンプトンという自転車はどちらかというと特殊商材で、自転車店の中でも専門的なお店で商品が取り扱われているケースが多い。ちょっとした部品でも専門店で商品を探し、店舗個々のウェブショップに顧客登録してパーツを購入する必要がある。贔屓にしているショップが近くにあれば良いが、地方だとそうもいかない。嗜好性が高くてそこが良いといえばそれまでだが、消耗品くらいは身近な大手通販サイト等で手に入れたいと思っている。それこそ国内のAmazonだと独自の専用ページが用意されていてラインナップも豊富だったり、楽天でも各ショップさんが幅広く商品を扱っているので買いやすい。これは国内ブランドならではだと思う。

Panaracer Amazonオフィシャルページ

自分でメンテナンスに挑戦する文化も、ブロンプトン等の小径車が日本で愛されている理由のひとつ。最近の検索アルゴリズムでは個人ブログが見つかりにくくなったが、「ブロンプトン タイヤ交換」と検索すれば、手順を詳しく解説したブログが今も数多く見つかる。

タイヤサイドのロゴも700c版と同じ。アンバーカラーがあるのはとっても嬉しい。なお貧乏性なのでサンプル版を履き潰してから交換することにした

それに関連してブロンプトン全般のタイヤに関するTIPSをひとつ追記しておきたいと思う。何度かブロンプトンのタイヤ交換をした際、円周でタイヤが少し波打っているように感じた。よく確認するとリム側のビードシート(タイヤのビードが乗っかる部分)までビードが上がっていないようだった。今回は4.5bar(規定の最低圧)でパコンと音を立てて乗り上げてくれたが、うまくいかない場合はリム側に石鹸水を塗ってから空気を入れると良いと思う。いわゆるチューブレスタイヤでよくあるTIPSだ。

 

最後に

見慣れたこの佇まいも、全てが設計の上になりたったデザインだと考えるととても美しい

アジリスト[35-349]の登場によりブロンプトン向けのタイヤ選択肢がさらに広がった。軽量で転がり抵抗が少なく、街乗りから長距離ライドまで対応できる性能は多くのユーザーにとって魅力的だろう。見た目がクラシックなアンバーサイド(飴色サイド)もあるので、渋めな色合いの一台にはぜひこちらを合わせてみてもらいたい。

アジリストのみならず、同社の人気ラインナップにブロンプトン用タイヤが加わることの期待も込めて、文章の締めとしたい。

●製品名:「Panaracer AGILEST(パナレーサー アジリスト)」
●製品サイズ:16×1.35 (35-349)
●製品タイプ:TUBED
●ビードタイプ:フォールディング
●重量:225g
●税込参考価格:6,380円
●生産国:日本
●発売日:2025年2月10日(月)

●品番
F16135-AG-B (ブラック×ブラックサイド)
F16135-AG-AX (ブラック×アンバーサイド)

●使用テクノロジー:
・PR(パンクチャーレジスタント)シールド
耐貫通パンク強度を高めるナイロンタフタによるシールド構造
・AX-α(アドバンスドエクストラアルファ)コード
柔軟性にもすぐれた0.14mm径の超軽量極細コード。素材改良により転がり抵抗がさらに軽減し、高密度に織り込むことで軽量化に貢献。
・ZSG(ゼロスリップグリップ)アジャイルコンパウンド
前ロード用フラグシップモデル「RACE EVO4」シリーズのコンパウンド「ZSG ADVANCED Compound」から12%の転がり抵抗低減。グリップ力も強化。

●商品詳細ページ:https://panaracer.com/products/compact/agilest/agilest-16in/

Panaracer AGILEST [35-349](ブロンプトン用タイヤ)発売&レビュー

kossy


自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て泥の中をレースするシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動を続けている。Wilde Bikes唯一のサポートライダーとして国内トップカテゴリーを走る一方、本職では自動車整備業に従事。乗り物のほかコーヒー、銭湯、カメラにアウトドアなど、趣味は常に多彩でオーバーフロー気味。 Instagram / Twitter / Facebook


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