全日本選手権を走ってきました。前回勝者として挑んだ試合でしたが、2位でした。今シーズン、レースの模様は主にInstagramで動画をシェアしていますが、全日本は文字でその経緯を残しておこうと思います。(長いです)

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今年からJCFシリーズ戦が始まり、エリートへの参加資格はこちらのポイント累積に移行されました。関西のシリーズと丸かぶりだったため、エリート出場は諦めてシングルスピード部門にのみ参加することに。開催地は愛知県稲沢市の祖父江砂丘、通称WNP。シクロクロスらしい砂区間を有し、高低差もあるダイナミックなコース。何度も遠征をして走った大好きな場所で、ここで開催される全日本を走りたいと長年秘めていた願いが実現しました。

<準備編>

全日本は、その日だけの話ではありません。1年かけて用意してきたことを発揮する日です。トレーニングは数年前から沢田時選手に教えを請い、メニューを作ってもらっていました。具体的な内容は書けませんが、シクロクロスの1時間にフィットした内容を1年かけてこなしてきました。

ケアは、普段地元のトレーナーさんに2週間に1回ペースでお願いしています。西宮市のトレーナーズサロンオカダさんは、野球をはじめとして様々なスポーツ選手・一般の方のケアをされています。今回は全日本1週間前(前レース希望ヶ丘の直後)と3日前にお願いしました。前レース後は疲労した筋肉を徹底的にほぐしてもらい、3日前は可動域を広げる内容でした。砂なので上半身をたくさん使います、肩甲骨を中心に腕や腰回りがしっかり伸びて動いてくれるように仕上げてくださいました。普段2週間に一度でも足りていないくらいなので、丁寧に用意された自分の身体の自由さに驚きました。

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自転車はいつも通りAll-City CyclesのNatureCross-SS。セッティングの変更などはなく、念のためにBBのベアリングだけ打ち替えました。シングルスピードだけのレースは、ギア比が命です。僅差でレースが進むと、相手より重いギアを踏んだ方が有利となります。普段3枚のRコグで調整していますが、まずは重い方で試走をしてみて、踏み切れそうになかったので真ん中のいつものギアに落ち着きました。(39×19)

<前日>

こういった選択ができたのも、前日試走のおかげです。関西からまだ近い愛知県へは金曜日入りしました。コースウォークで根っこやポイントになるであろう箇所を重点的に確認しました。試走は1時間、砂の下りで勝負が分かれるのは理解していましたが、それをどこでリカバリーするか。林の中で分岐や要注意箇所が複数あったので、身体で覚えるまで繰り返し走ります。正直、砂の下りは納得行くほどキレイに走ることができなかったものの、どちらにせよここを降車する選択肢もないので、ある程度で妥協して試走を終えました。

準備魔のメモ帳

出走は土曜日朝の9時半。いつもの段取りと違って時間が早いのがネックです。ただ準備魔の自分は、予め試走で着るものから食事する場所、食べる時間まで多くのことをスケジュール化しています。試走が終わったら予定通りホテルへの道中で飯食って片付けて寝るだけです。いつも通り寝る前に読書して、リラックスして次の日を迎えました。

<当日>

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朝試走はコンディションが変わりそうなところが予想できていたので、定刻通り進めて納得行くまで。雨なのでサッと着替えて暖かい格好でギリギリまでくつろぎます。そういえば試走をしたらあまりアップをしない自分、全日本だからといって特別なことはせず、いつも通りで召集5分前にスタートエリアへ。集中していたのであっという間にカウントダウンでした。

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クリートキャッチもそれなりに上手くいき、前回2位の三宗選手の番手につけます。と、舗装路でいきなり斜行、その先の砂入り口手前で斜行。ギリギリ交わして一呼吸入れてから砂を抜けます。2コーナー目は速度域が高すぎて1周目は曲がれないと思ったのでアウト側から。三宗選手を交わせそうでしたが、一旦前で泳がして様子を伺うことに。前哨戦のWNPではエリートを優勝した織田選手が6分半以下でラップしていたので、僕らだとおそらく7分強。つまり4周です。極端に最初から抜け出せなければ1〜2は様子を見て、3〜4で決めに行く心算でした。

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今回からプラスされた砂のUターンセクション。試走で散々乗っていけないか試しましたがリスクがあるので折り返しでサッと降りる。とここで三宗選手がミスして、僕と、後ろにつけていた川村選手が前へ。このあとはテクニカルな箇所が続くので僕が先行します。あくまで自分のペース&リズムで丁寧にセクションをこなし、1つ目の砂下りは上手くいき少し後方とアドバンテージを築きます。

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割と冷静に判断をしているようにも思えますが、レースは30分。いつもよりペースが速く、30分ギリギリ持ちそうなところを模索しながら周回を重ねます。少し築いたギャップは、2周目で川村選手が縮めてきました。砂の下りは先行しますが、ここで痛恨のミス。落車はしませんでしたが、大失速し川村選手から少し遅れてしまいます。当然相手は見計らったように踏んでくるので、おそらく最大で10秒以上の差が生まれたでしょうか。3周目は同じような状態でラップし、最終周回へ。(三宗選手は2周目後半でタイヤが外れてリタイヤ。後ろの方から叫び声が聞こえたので何となく察していた)

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正直かなりキツく、この辺りから意識が遠のいていくのですが、シケイン手前の砂場で川村選手が落車します。10秒弱が埋まり、その後もフラフラしていて明らかに辛そう。結局追いつき、こう着状態で林間区間を抜けます。砂区間手前で息を吹き返したのか思いっきり踏んできたので、番手で最後の砂場へ向かいます。この後抜きどころはそうないし、砂は上手い人の後ろの方が走りやすく、ある程度休むことができるのでワンチャン最後のスプリントに賭けます。

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と、砂の下りに入る手前、川村選手が降車して坂を押している。自分は乗車でクリアできそうだったので、強引に道を開けて彼の前へ出ます。そして目の前に広がる砂の下り。これでレースが決する。全体的に記憶が薄い今回のレースの中で、唯一鮮明に覚えているこの瞬間。

先に書いた通り試走からこの下りに不安があって、あまり上手く走れていませんでした。振り返ると、轍をトレースすることに集中しすぎて過剰に前荷重になっていたことが原因ですが、試走〜本番でそれに気がつけず、毎周回減速していました。あの下りに入る瞬間、「あぁ上手くトレースできるかな、、、たぶん無理じゃないかな」不安が脳裏をよぎる。頭に浮かんだことがそのまま実現してしまい、砂でまたミス。せっかく築いたギャップは埋まり、川村選手に先行されました。

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無理に乗車していった自分を確認した川村選手は即座に降車してラン。そのペースに追いつけず、ここで敗北を悟りました。

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<振り返って>

いま落ち着いて振り返るとミスだらけのレースでしたが、それでも数年前は自分より格上だと感じていた川村選手と最後までどうなるかわからない試合ができたことが嬉しくてたまりません。年間20レースほど走りますが、ここまで良い試合ができることはほとんどないです。優勝した川村選手、本当におめでとう。怪我もあった中、レースに参加してくれてありがとう。

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そして、試走でできないことは本番でできないと改めて感じました。試走は納得いく落とし所を見つけるまでちゃんとやる。そして来シーズンに向けて根本的なフィジカルの向上を図ろうと心に誓うのでした。

今年は最高のレースレポートとはいきませんでしたが、それでも自分のことをサポートしてくださる企業のみなさま、応援してくださるみなさま、妻には感謝です。

Motocross International
All-City Cycles
Panaracer
WAVEONE
RIDEWORKS

ありがとうございました。

Photo by Kikuzo & ようかんさん

2022-2023 シクロクロス全日本選手権(SSCX)

kossy


自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て泥の中をレースするシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動を続けている。Wilde Bikes唯一のサポートライダーとして国内トップカテゴリーを走る一方、本職では自動車整備業に従事。乗り物のほかコーヒー、銭湯、カメラにアウトドアなど、趣味は常に多彩でオーバーフロー気味。 Instagram / Twitter / Facebook


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